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分子科学研究所 極端紫外光研究施設(UVSOR)研究会開催のお知らせ
軟X線共鳴散乱・反射率 / Resonant Soft X-ray Scattering and Reflectivity
放射光施設における散乱手法、特にX線小角散乱(SAXS)は、軟X線領域では専ら磁性分野にのみ利用されているのに対し、硬X線領域では広い分野で物性研究に利用されている。しかし、特にポリマー、液晶、バイオマテリアルといったソフトマター・ソフトマテリアルの多くは炭素、窒素、酸素などの軽元素から構成されている。それにより、例えば異なるポリマーが試料中に存在しても硬X線では十分な散乱コントラストが得られず、多くの場合情報を分離することが困難である。そのため、コントラスト変調を狙って中性子散乱での重水素ラベリングや臭素を導入したAnomalous Small Angle X-ray Scattering (ASAXS)が行われている。
一方で、第三世代の放射光施設で必須の手法となったScanning Transmission X-ray Microscopy (STXM)は、その高い空間分解能(数十ナノメートル)にNEXAFS(軟X線吸収分光法)をベースにした分光手法を合わせることで、例えば、ポリマーの相分離構造の研究といった高空間分解能と化学状態弁別性の両方が必要な研究に大きく貢献している。そのため、Spectro-Microscopyと呼ばれることも多い。近年、コヒーレンスを利用した新しい顕微鏡手法であるCoherent X-ray Diffraction Imaging、とりわけ、走査型X線顕微鏡の一つであるPtychographyは集光光学素子に制限されないより高い分解能の実現が可能であり、STXMと同様にNEXAFSを組み合わせることでSpectro-Ptychographyとしてリチウムイオン電池などの研究にその威力を発揮している。
15年ほど前から同じアプローチを散乱手法に適用した開発がAdvanced Light Source(ALS)を利用した複数のグループによって進められ、現在に至るまで著しい進展が見られている。このResonant Soft X-ray Scattering/Reflectivity(軟X線共鳴散乱・反射率)と呼ばれる測定手法の大きな特徴は、試料を改変することなく化学結合状態由来のX線吸収端近傍の微細構造に入射X線のエネルギーを合わせることで、化学結合(官能基)コントラストの変化を制御できることである。米国のALSとNSLSIIで建設された専用ビームラインでブロックコポリマー、有機エレクトロニクス、カイラル液晶などで成果を上げ、更にタンパク質やセルロースといったより複雑な系にも応用が進められている。(総説[1]ではSpectro-Microscopyと比較してSpectro-Scatteringとも呼ばれている。)本研究会では、ソフトマター及びソフトマテリアルを主対象として、現在準備が進みつつある各施設の最新情報を共有し、ユーザーの展開するサイエンスケースを考慮した今後の装置開発・整備の指針を立てることを目的とする。
当日のプログラムは、この分野の第一人者であるCheng Wang博士(ALS)の講演を皮切りに、各施設からエンドステーションの開発状況を含めた現状の解説、相補的な手法となる硬X線や中性子を利用しているユーザーおよび軟X線共鳴散乱の初期利用に参加しているユーザーからの研究の紹介を予定している。最後に、1)サイエンスケース、2)その実現に必要な設備と現状、及び3)相補的な手法などについて総合討論を行う予定である。
本研究会を通して、この手法の詳細と適用例が幅広い分野の研究者に周知され、施設を跨いだユーザーコミュニティの形成につながれば幸いである。
世話人: Diamond Light Source 荒木 暢
記
会議名:軟X線共鳴散乱・反射率/Resonant Soft X-ray Scattering and Reflectivity
●開催日時:2022年11月8日(火)10:00-17:15
●開催方法:オンライン開催(Zoom開催) ※講演者は現地(分子科学研究所)にて講演
●開催場所 : 各自、開始時刻までにZoomにてご参加ください。 Zoomは、開始時刻20分前にはアクセスできるようにいたします。
●参加費:無料
●主催:分子科学研究所 UVSOR、協賛:高分子学会、応用物理学会、後援:分子科学会
※UVSORの記録用のために、講演は録画しますが、公開はしません。
参加登録について
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